あの日、Hagexさんと話したこと。
Hagexさんが亡くなって1年がたった。
時間がたつのは早い。ポッドキャスト「donguri.fm」のゲストに出てもらったのもだいぶ前に感じる。
このとき収録したエピソード(1、2、3)はこの1年の間に何度も聞き返した。
Hagexさんは後日ブログに、ゲスト出演してくれたこと、そしてラジオで話すコツについて書いてくれた。ここまで考えて話してくれる人だった。
せっかくなのでこのタイミングで、Hagexさんが語ってくれたことを振り返ってみたい。
まず最初のエピソード、「ゲストはネットウォッチャーHagexさん、その意外な素顔」より書き起こし。
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narumi:今日は実はなつめさんが体調不良でお休みなんですけど、めちゃくちゃ豪華なゲストが来てくださいました。ブロガーのHagexさんです。
Hagex:こんにちは、Hagexです。
narumi:Hagexさん、僕は昔からブログを見ていたんですが、お会いするのはこれで2回目ですね。
Hagex:そうですね。前は中川(淳一郎)さんと山本(一郎)さんのイベントの時に登壇者として。
narumi:2014年の「戦え! バイラルメディアの皆さん!」。お互いゲストで出た感じでしたね。そこから4年ぐらい。Hagexさんの声が聞ける機会ってあまりないですよね。
Hagex:昔一度ラジオに出たきりで、それ以降は全然声は出てないですね。
narumi:もちろん顔も出されてない。
Hagex:そうですね。顔を出した時はサングラスをかけてるか墨で潰してるかって感じですね。
narumi:簡単に自己紹介してもらっていいでしょうか。
Hagex:はい。「Hagex-day.info」というネットウォッチをメインにしたブログをやっていまして。2004年から、気が付けばもう14年目っていう。
narumi:すごいですね。ブログの大先輩ですね。
Hagex:そうなんですかね。最初の頃は友達と、読売新聞がやっている発言小町で「こんな投稿があったよ」とか「こんな返信があったよ」っていうのを共有するために発言小町の投稿を引用して…。
narumi:面白い発言小町を掘り出すような感じの。
Hagex:そうですね。当時の発言小町はシステムがよくできてなくて、最初にトピを立てた人だけを抜き出して読む機能がなかったんですよね。それを分かりやすくするためにトピ立てをした人だけを抜いてブログに貼ってみたんですよね。
narumi:すごい便利なことをしてくれてたんですね。ボランティアで。
Hagex:そうなんですよ。ただ、頑張りすぎちゃって読売新聞さんからはてな経由で…。
narumi:お取り潰しが…。
Hagex:「著作権的によろしくないんじゃないかしら」って言われたんです。
narumi:発言小町をまとめたブログってけっこう消えていきましたよね。その中の1つということだったんですか。
Hagex:そうですね。他の発言小町のまとめブログも読売新聞さんから素敵な連絡があって(笑)なくなってしまったんですね。
narumi:残念ですね。ああいうまとめブログがあると今何が面白いかとか盛り上がってるとか分かりやすいんですけどね。
Hagex:そうなんですよね。当時はまだ発言小町はトピの数が少なかったんで全部追えなくはなかったんですけど、やっぱり2~3年ぐらいから全然追えない量になっちゃったんでそういうまとめブログが出てきたんですけど、残念ながら…。
narumi:それはみんなに面白いものをキュレーションしてあげたいというか、選んで見せてあげたいっていう熱意みたいなものからなんですか。
Hagex:最初は友達とかと共有するためにやってたんですけど、結局友達だけじゃなくて他の人達にも段々見てもらうようになって。当時はまだキュレーションって言葉がなかったんですけど、需要があって、「みんなで発言小町を楽しめたらいいな」というところから始まったんですよね。
narumi:それがあのHagexブログの原型になっていると。
Hagex:今の原型ですね。見てもらうと分かりますけど、最初の頃は「こんなものを食べた」とか「こんな映画を見た」とか「スピリッツを読んでこの作品が楽しかった」っていう、本当に日記だったんですよね。
narumi:いろいろ変化していってるんですね。
Hagex:タイトルのHagex-day.infoも「自分の日記」という意味だったんです。
narumi:なるほど。今はネットウォッチ系の記事と2chまとめ系の記事ですか。
Hagex:そうですね。正確に言えば2chの転載がいろいろと厳しくなったんで、「おーぷん2ちゃんねる」のまとめをやっていますね。それと音楽のPV紹介、おもしろ動画紹介、ネットウォッチといった感じですね。
narumi:普段のお仕事は何をされてるんですか。
Hagex:普段はIT系の仕事でオウンドメディアの編集をやってるんですよ。誤字脱字が多い日記なので編集というのが恥ずかしいんですが。
narumi:だから情報収集が上手というか、タイトルとかそういうところにプロの仕事を感じるというか。じゃあ僕らはネットの編集者という同業者。
Hagex:前に新書を出した時に、自己紹介で自分の生まれた年と職業を書いたんですけど、誰も言及してくれてなくて。
narumi:結構重要な情報ですよね、それ。
Hagex:そうなんですよね。だから紙に書いてある情報ってやっぱり見ないんだなっていうのがあります。セキュリティとかIT周りとかその辺りを見ているので、今のネットウォッチとあまり繋がってないところですね。
narumi:Hagexさんってめちゃくちゃネットウォッチをしてる人ってイメージなんですけど、自分のSNSアカウントは持ってないじゃないですか。それがすごく不思議だったんですよね。
Hagex:昔はTwitterをやってたんですけど、Twitterをやると僕の性格上、人にツッコミを入れてよく喧嘩をしてたんですよ。
narumi:メンション飛ばし合ってっていうことですか。
Hagex:そうです。初期の頃は自分から飛ばしてたんですけど、後期の頃は僕がもらう方になって、そこでよく言い合いをして、気が付けば朝の5時とかになってて。
narumi:不毛すぎると。
Hagex:そうなんですよ。自分で喧嘩したツイートのログをまとめるとかっていう発想も無きにしも非ずだったんですけど、やり取りを見ると起承転結なくひたすら言い合いをしているという、ネットにありがちな、「読む人は辛いだろうな」って…。
narumi:全然知らなかったです。それはいつぐらいまでやってたんですか。
Hagex:4~5年ぐらい前ですかね。大麻愛好家の人達と一時期凄いやり合ってましたね。
narumi:今は物腰が凄く柔らかくて、まったく喧嘩とかしなさそうな人に見えるんですけど。
Hagex:そう言ってもらえると嬉しいんですけど、やっぱりネット弁慶なところがあって。あと僕もちょっとカッとなるところがあって、元々ブログを始めた理由がさっきの「発言小町を共有しよう」っていうのもあったんですけど、やっぱり「ネットの喧嘩をしたい」っていうのが隠しテーマで実はありました。
これは初めて言うんですけど、「喧嘩をする時には味方がいっぱいいなきゃいけないんじゃないか」っていうのがありまして、それで「PVを稼ぐブログを作ろう」っていう裏の目標があったんですよ。
narumi:すごく珍しい動機ですよね。
Hagex:やっぱり味方が多い方が喧嘩になった時に加勢をしてくれるんじゃないかと思ってたんですけど。それで、一時期月間400万PVぐらいまでいったんですけど、そこまでPVが増えちゃうと簡単に喧嘩ができなくなっちゃうという…。
narumi:なるほど。純粋にファイトを楽しめない。あまりに強者になってしまうと弱い者いじめにしかならなくて、それは戦いではないと。
Hagex:結果的に僕が悪いような感じになるんじゃないかっていうのがありますし、僕も喧嘩ってお互い平等なところでやると楽しいんですけど、一方的にやるんだと…。
narumi:武器が強くなりすぎてしまったということなんですかね。
Hagex:そうなんですよ。だから最近はいろいろと…喧嘩というかやり合うのがネットの華っていう世代なんですけど、なかなか相手がいないという。
narumi:そういうことだとは全然思わなかったです。じゃあどうやってTwitterとか見てるんですか。
Hagex:TwitterはYahooのリアルタイム検索から追っていくパターンと、あとは「この人のアカウントが面白い」っていうのをエクセルでまとめておいて、そこから一つひとつコピペをしていくんですけど、アカウントを持ってないと、特にTwitterをスマートフォンとかで見た場合、「アカウントを取りましょう」って全面広告が出てくるんで。
narumi:やっぱりアカウントを取った方が断然見やすいですよね。
Hagex:見やすいですね。だから不便なんですよ。
narumi:それでも喧嘩しちゃうからアカウントは取らないと。
Hagex:はい。たぶん今持っちゃうといろんな人から賛否両論を言われると思うんですよ。だからズルいんですけど、僕はそれを見ちゃうんで。そういう意味でも、SNSを持たないことでよりブログだけで伸び伸びとできちゃう。
narumi:人のSNSをまとめて書いたりはするけど、自分は言われたくないからやらんと。
Hagex:はい。すごくズルい戦略をやってるんですよ。
narumi:それは最強ですね。
Hagex:逆に相手がブログとかを作って喧嘩をやってくれるのはすごいやりやすいんですけど、一気にハードルが高くなっちゃうんですよね。
narumi:なかなかいまどきブログで交互にエントリー出し合ってネットバトルするなんてないですよね。イケダハヤトさんと山本一郎さんのが懐かしいなっていう。あれぐらいじゃないですかね。
Hagex:あれからそういうバトルはあまり見たことがないですね。
narumi:もはやブログをやる人自体が稀有な存在というか、若い人はやらないじゃないですか。
Hagex:今日イケダハヤトさんのTwitterを見てたら、確かヒトデさんだったと思うんですけど、「ネットで頑張るにはブログをやりましょう」というエントリーを上げてて、すごい新鮮な感じがしましたね。
narumi:「そんな面倒なことしなくていいんじゃないかなぁ」っていう気もするんですけど。
Hagex:ただ、TwitterとかFacebookがこれだけ広がっちゃったから、逆にまたブログ回帰に来てるんじゃないかと。
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僕がこんなことを言うのは変かもしれないが、Hagexさんのことを忘れてほしくない気持ちがある。Hagexさんはこんなことを考えていて、こんなふうにしゃべる人だったんです。
続き(2つ目のエピソード)はまたのちほど。
--@narumi
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